Vol.130 魔女の贈り物 谷埜 貴美

Apple iPad2

ちょうど一年程前、魔女は、88才になった父に米寿のお祝いにiPadを送った。

 

父のMac歴は、昔、昔、iMacのグレープ。韓国人の牧師様の留学生が、本国に帰るので、買って欲しいということで、魔女が譲り受けた。この葡萄色のiMacを父の元に送りつけた。

そうして、70才になろうかという、父は、初めて自分だけのパソコンを持った。

 

昔、iMacのグレープを見て父が最初に発した言葉は「なんとまあ、これがパソコン???。」だった。

「こんなパソコンを持ってくるなんて、おまえはやっぱり…。」

「おまえはやっぱり…。」の後の何だったにか?変わってるか、訳が分からんという言葉が続いたのか…。

 

さて、昔話はここまでとして、今度、88才の父がiPad2を手にして発した言葉は

「あ!これは、町で見かける。電車に乗ると、みんな若い子は手にしてる、….ん?これは大きいなあ!」とiPad手で掴んで、目より上にかざしながら聞いてくる。形から素直に、スマートホンを連想したようだ。

 

その後、画面を見て魔女があれこれ説明しているうちに、ふと父が、急に顔を上げて一言。

「これ、パソコン?」と聞いてきた。

ああ!父は、生まれて初めてiMacと出会った時とまったく同じ事を言ったのである。

 

旦那がまあ、パソコンの簡単なやつと思えば。と横から言う。

父は続けて「この板みたいなやつが、パソコン?」と。板か。確かに横から見れば単に板だ。

 

魔女は画面を見ながら説明を続ける。「そう家で使ってるiMac連想してね。右に並んでるでしょ?iMacならね?四角いマーク。ここでは、画面いっぱいに並んでるけど。」アイコンの事を88歳にそんな表現しながら説明は続く。

「ほら上にリンゴのマークあるでしょ?林檎、林檎。上に出てくる帯は、ちょっといつも見てる、iMacと似てるでしょ?」バーをそんな表現で言う

 

そうこうしているうちに、バー上の検索が判ったようだ。

「ほらキーボードが下から、出てきた。キーボードで、「のらくろ」って打ってみて。「軍歌」って打ってみて。」

だんだん、父は私の説明を聞かずに触りだした。

 

と、ヤフーの画面になったら、とたんに、年老いた父の脳の中で何かが繋がったようで、「あ!そうっか!!おお〜そうか?」と声をあげるなり、画面を簡単に操作するようになった。

 

写真に説明が行く頃には、自分のカメラを取り出して、「これ、このカメラの画像、入れることできるか?」とまで聞いてきた。「画像は、入れることが出来るよ。」と魔女が言えば、特に嬉しそうに、「そうか、そうか」と頷いた。

「写真がこんなにきれいで大きく見えるなんて!」写真を親指と人差し指で、伸ばしながら父が声を上げる。

父は、もう片方の目が殆ど視力を失いかけていて、パソコンを見るのが辛くなってきていたのだ。いつもいつも、iMacの画面に顔を押しつけるようにして小さな字を見ていたらしい。

ここで、魔女が「これカメラになるんだよ。」とiPadのカメラ機能を使うと、多少何が何だか判らなくなってきたようだ。

 

ひとしきり、説明が終わった頃、「説明書はないの?」と聞いてきた。「ない」魔女の一言の返事で終わり、「説明書無くても、そのうちいつの間にか、慣れてくるわ。楽しんで。触って、触って。いやだったら触らなければいい。触って楽しんで。遊んで。」と多少無責任な魔女の意見を外に、父が嬉しそうに頷いた。「触ったらええんだな?」

 

「学習じゃないよ。楽しんで。遊んで。」この言葉は父の緊張を一気に解きほぐしたようで、「明日から家で使えるかな?ちゃんと遊べるかな?」と聞いてくる。

「別に明日じゃなくって、今日、帰ってからも使えばいいじゃないの?明日なんて悠長な事言ってたら、忘れるかもよ。」と、冗談とも本音とも着かない言葉で魔女が返事をした。

その日、帰宅した父から電話で「ユーチューブが!どんどん、見られる」と嬉しそうに報告してきた。

 

米寿のお祝いのiPadはこうして父の元に渡った。

 

そして、父がiPadを手にしてから、1年が過ぎた。その1年間には、「ユーチューブが見れなくなった」(OSを更新したために)とか、早くから父の家は私が勝手にeo光にしてるのだが、「NTTがメールが少ないなら、通信を代えたらどうか?とひどく勧められて困っている、どうしよう?」

とか、そんな、こんなのお気楽な事件は多少あったりしたが、大きなトラブルも無く月日は過ぎ去っていった。

母からの話だと、iPad貰ってから1,2ヶ月してから、毎日、父はしっかりiPadを抱いて寝ているらしい。

 

今、父は、iPad2無しでは、今後の人生は考えられないそうだ。ここまで、言って貰えるのなら「賢者の送りもの」と魔女は、自画自賛してしまっていた。

 

しかし、父が昨今、iPadを抱いて寝るせいで、魔女には悩んでいることが出来てしまった。

 

今後の人生といえども父はすでに、89歳。今後が20年あるわけではない。

ブラックな笑い話である。父とこのiPadを冥土まで、連れ添わせるかどうかを悩んでいるのだ。そこまで、iPad2を愛してくれるならば、父の人生の終わりに、父にiPad2を抱かせたまま送り出す…..。

まあ、それは、その時に考えることにしよう。

父の「おまえはやっぱり…。」の言葉が聞こえてきそうだから。

 

次は父の99歳のお祝いだ。さて。なにがどう世界が進化していくのだろう?通信形態も変わっていくのだろうと思いながら。とりあえずは、次世代のそのまた次世代のその次くらいのiPadを送れる事を願う事にしよう。今、魔女が、自分のiPadを見ながら微笑った。

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大阪の片隅で占いを生業にしている占い師です。

税務署曰く、仕事の分類は易者だそうです。

鑑定所を開いて20年程。12万人以上鑑定してきました。

Macとの付き合いも20年程。

若いときは外見が、宝塚の男役のよう、なんて言われておりましたが、

年齢が上がるに連れて、本当にだんだん魔女っぽくなってきました。

こんな人です。↓

http://xbrand.yahoo.co.jp/category/entertainment/5851/8.html

久々の林檎いとしやの更新です。

今回は、大阪の魔女を引っ張り出しました、彼女は、僕のUGである、MUGNETの仲間で、JR寺田町に鑑定所を構える占い師さんです。よく当たるという評判の占い師さんですので、悩みのある方は、相談してみれば、、、

彼女の公式サイトはこちら

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