Vol.122 GUIの先にあるモノは? びっき

Macintosh IIsi
僕の世代はファミコン世代筆頭である。しかし小学生の頃はファミコンをもってなかった。代わりにMSXでベーマガ片手にサンデープログラマー。5年生ぐらいにMSX-DOSというものの存在を知り、”OS”という概念に触れた。正直、最初はよくわからなかったけど、複数のファイルをリネームしたり、一斉にコピーできたりしていると、ああ、なるほど便利だな、と思うようになっていた。
DOSのコマンドなんてたかが知れているので、小学生でも覚える事ができた。少しパソコンというものの世界が広がった頃。でもそれは、黒色の背景に白い字だけの世界。

「・・・友達いなかったの?」

そんなことはないけれど(笑)。
おそらく1985年のある日、いきつけ(^^;;)の名古屋のパソコンショップに、いかにも「舶来の品」という感じでMacintoshがディスプレイしてあった。幸いにして電源が入ってたので触ってみたのである。DOSがわかっていたので、目の前のGUIもよく理解できた。そして素直に感激した。

コマンドなんて覚えなくてもいいじゃん。

これがきっと新しいカタチ。垂涎のまなざしでプライスカードを見たら、0がいっぱいついてて、とにかく自分には無縁なものだと感じた。でもアコガレだけはずっと持っていて、HAL研究所が「HALNOTE」を出した時はお年玉を全部投入して買った。HALNOTEは良くできてたし意欲作だったと思うけど、メインメモリが64KB(←64MBではないっ)のMSX2ではちょっと荷が重かった。

高校の頃にX68000が発売され、SX-WINDOWSにMacの面影をみて、うずうずはしたけど、なんだか遠くの世界のものだった。やがて高校生活も佳境に入るといよいよパソコンから離れてしまい、人並みに部活で青春し、恋をし、受験をし、気がつけば大学生に。

1年の春、やっとバイト先が決まった次の日に、友人と例のいきつけのパソコンショップへ行った。在庫一掃セールをやる、というチラシに惹かれたのだ。そこで目にしたものは「5万円」の値札が貼られたMacintosh IIsi。

(・・・ご、ごまんえん??)

「あのぅーこれって中古品ですか?」
「いえ、新品ですよ」

ニコニコしている店員相手に既に頭の中は電卓がぐるぐる。いかんせんその頃はパソコン雑誌すら読んでないので、目の前にあるMacがどんなものかよくわからない。詳しくスペックを聞くとCPUが68030で、メモリが5MB。68030という名前はまだ新しい記憶だ。・・・つまり、まだ「使える」ということだ、と結論(実際にはやはり型遅れだったけどね)。晴れて大学生になったという自負と、バイト先も決まった安心感で、結局そのMacを持ち帰ることになった。もちろん、モニタもキーボードもHDDも別売り。プリンタも必要だ、とStyleWritterIIを購入。実は総額20万円。有頂天になってて本体のことしか考えてなく、5万円という数字が頭の中を支配していたのに、気がつけば20万円である。しかし、もう後には引けない。

人生で初めてローンを組んだ

”Macを買う為に”初めて公的に借金をした。びびりながら契約書にサイン。ついこの前まで高校生だったのに、一気に大人の階段をかけあがるようでドキドキした。利子が怖いので3回払いでお願いする。ローンを組む、というのはなんだか大罪のような気がしたけど、あのアコガレのMacのオーナーになれる、という欲望が勝った。

「バンドルされてるOSが古いもの(漢字TALK6.0.7)ですので、後日最新版(漢字TALK7)を送らせていただきます」
「はぁ・・・(なにがどう違うのやら)」

ここで、ふとQuickTimeという単語が浮かんだ。マルチメディア、のなんだかすごいやつ。

「すいません、QuickTimeも欲しいんですけど・・・おいくらですか?」
「漢字TALK7なら中に入ってますよ??」

そもそもQuickTimeが単体のソフトだと思い込んでたのだった。機能拡張なんて言葉も意味も知らなかった。でもこれで、念願のMacオーナー、だ。後になってわかったことだが、当時の自分のバイトの1ヶ月の収入は5万円強。20万円を3ヶ月払いにしたので、3ヶ月間マイナスが続いた(つらかった)。

漢字TALK7が送られてくるまで結局1ヶ月かかり、その間6.0.7のOSだけ触っていた。メモリがまだ1MB=1万円の時代の貧乏学生にメモリを増設する余裕は無く、5MBの実装メモリのままで、ひたすらに機能拡張を出し入れして、漢字TALK7のシステムヒープを減らすことにあけくれてた。ソフト買う金なんてないし。でも楽しかった。「これがきっと新しいカタチ」はWindows3.1がようやく発表された中でも変わらない魅力があった。

決して整った、と言えるシステム構成じゃなかったけど、それでもあの白い筐体はその所有欲を十分に満たしてくれる輝きをもっていたのだ。

その後、LC630→PowerMacintosh 8500→PowerBook 2400c→B/W→iMac800(FlatPanel)と乗り継いで来て、今はIntelでDual CoreなMacMiniを使っている。社会人になった時は国家機密さえ扱う某社のネットワークにこっそりDAVEを使って自分のMacをつなげて仕事をしていた。おかげで情シ部と言い争うことになったけど。

OSはXになって精錬され、MacはMacらしさを保持しつつ新しい時代へ踏み出そうとしている。

iPodやiPhoneのインターフェースをみていると、GUIはGUIなんだけど、つまんだり拡げたりまわしたり、もちろん用途が限定されている事はあるけれど、パソコンにも次なる「これがきっと新しいカタチ」が登場するのではないかと思う。しばらくそんな夢を見ている限り、僕はまだMacユーザーであり続けるんだろうなぁ、と思う。

MacTree びっき
気がついたらMacTreeのスタッフになってました。大して(というかほとんど)お仕事もしてないのですが、ついに林檎いとしやの寄稿依頼がきたのでした(笑)。

 

 

名古屋から大阪に飲みにきて、飲んでる最中に、当時人手不足だったMacTreeに無理矢理誘われた彼、、、、でも、やめるって言わないってことは、、、好きなんですよね、マックが、、、

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