Vol.106 Mac の内側と外側を教えてくれた Performa 5430 木下幹司
Performa5430
自分にとって、パソコンは「プログラミングするための道具」という認識がずっとあった。
古くは、中学時代に兄貴が所有していたNECのPC-9801シリーズから始まり、社会人になってからは、DOS/V 系のパソコンを中心に使っていた。
「ゆがんだ画面に不正確な寸法、よどんだ発色」
そんなものは、常識であり、不満をいだくほどのことではなかったのだ。
「Mac がクリエイターたちに支持されている」
その理由がなんであるか?など僕はひとごとのように思っていた。
Windows 95 が発売された、そんな時期に”インターネット”は少しずつ普及し始めていたと思う。Windows 95
が注目されたとき、Mac もわずかであるが、世間から脚光を浴びることになる。
しかし、当時から、Mac で出来て、Windows で出来ないことなどほとんどなかった状態だったので、僕はMacに対してさほど興味を抱くことはなかった。
そもそも、事務的な用途でしか使わないので、パソコンなんてなんでもよかったのだ。
そんなある日、「プラモデル」というキーワードでインターネットを検索した。
その検索結果に、「Prograph CPX※」 というプログラミングソフトウェアがヒットした、興味本位でそのページを見たとき、僕は衝撃にうちのめされた。
※現在は生産中止となり販売してませんが、Marten として復活しています。
このソフトウェアはデータフロー図を作成することで、実際に動くプログラミングを可能にしたもの。
もちろん、それだけではなく、少ないコマンドで十分な操作を可能にしているメニュー体系、アイコンによって一目でわかる処理の種類や流れ、テキスト入力して、それがAPIであれば、自動的にAPIのアイコンに変化し、自動で引数のセットが追加されるなど、使いやすさへの配慮もすばらしかった。
さらにデータの受け渡しが線と線を繋げることで実現しているため、テキストベースのプログラミングと比べて圧倒的に変数名を決める量が少ない。これにより入力ミスが減る。
このソフトウェアを使えば、初心者だけではなく、大規模なプログラミングにおいてもストレス無く作業が可能となることは、プログラミングが素人の僕にでもわかった。
そして、何よりこのソフトウェアは当時 Mac でしか動かなかったのだ。しばらくして僕がMacユーザーになったのは必然のことだった。
そのとき手に入れたのが、「Macintosh Performa 5430」。当時、20万円くらいしただろうか?
Prograph CPX が快適に動作するように 32MBのメモリを追加して、48MBにした。
最初に Performa の電源を入れると出てくるあざやかなグラフィック。家庭向けの Mac
だったので、初回起動時に「パフォーマツアー」が起動するようになっていた。
こうなってくると、もうカルチャーショックの連続である。すでに会社でMacを使っていたので、初めてMacを使うわけではなかったが、パソコンというものをこれほどわかりやすく親切に解説するものは、当時のWindows
では考えられなかった。
そもそも、パソコンとは”決して予備知識なしに使える物ではない”と思いこんでいたのだ。
Mac を使って衝撃をうけたのは、それだけではない。Mac で動くソフトウェアはどれも個性的で、しゃれていた。
紙のようにめくれる「ノートパッド」、画像だけでなくメディアも表示できるように作られた「SimpleText」、Mac
全体を自動化する「AppleScript」。
なにより僕のお気に入りは「Claris Works(現在のAppleWorks)」だった。この統合ソフトは、Mac
の使い方のあらゆるすばらしさを身をもって教えてくれるソフトだった。
また、Prograph CPX は Mac の中身を学ぶ最高の道具だった。ソフトウェアの操作性そのものも command キーや
option キー を多用した物で、Mac の操作性に準拠した非常にすぐれた操作性を持っていた。
このように、Mac の内側と外側を一度に体験することになったので、Mac への理解は人より早かったのではないか?と思う。
なによりも、僕にとって本当のパソコンは Mac だけだった。
だから、Mac が Windows
に対して、どの程度の実力を持つのか?などはどうでもよかった。少なくともパソコンを200%楽しむための工夫は、Mac OS
の各所にちりばめられ、その品質もWindows を遙かに凌駕(りょうが)していた。
「こんなにすばらしいパソコンを知らないWindowsユーザーはかわいそうだ」
そうして僕は、「おたくマニアWEB」というサイトで「僕がMacに入れ込む理由」というコラムを書いた。そして、そのコラムが All About
のスタッフの目にとまり、ガイド業務を始めるきっかけとなった。
今の僕があるのは、Mac のおかげであり、トラブル無く順調に動いてくれた Performa 5430 のおかげだったと思う。(現在は、iBook G4 を使用)
これからも、パソコンを楽しんでいない人たちが、少しでも Mac という趣味を見つけるためのお手伝いを続けていきたい。
オールアバウト 「Mac OS の使い方」ガイド
木下幹司
オールアバウト「Mac OS の使い方」ガイド として活躍中だが、普段は会社員として働いている。
ほかにも、Freeze Remover X などのAppleScript 製ソフトウェアの制作・配布も行っている。
ごくたま~に Mac People で記事を書くこともあるが、普段はのんきなおじさんである。
http://allabout.co.jp/computer/macos/
http://www.geocities.jp/otaku_mania/
http://hp.vector.co.jp/authors/VA018100/
■Performa 5430 情報
http://www.apple.com/jp/datasheet/performa/performa5430.html
■Marten(Prograph CPX の Mac OS X 版)
http://andescotia.com/products/marten/
■生年月日・血液型
1968年8月16日・AB
オールアバウトの「Mac OS の使い方」ガイドの木下幹司さんです。直接の面識はないのですが、僕としても、どんな風にマックにかかわってこられたかを知りたかったのでお願いしたら、快諾していただきました。
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