Vol.97 512K→Mac Plus アップグレード 高橋政明

Macintosh 512K カナバージョン

私の最初のMacは1985年に購入した Macintosh 512K カナバージョンです。まだMac販売店がなかったため事務機販売会社勤務の友人から購入しました。現物を見ずに注文したので、箱から最初に取り出した時に思わず「小さいなぁ」と言ってしまいました。カナ版でしたのでマニュアルもカセットテープのガイドツアーの音声も日本語でした。

そうそう、このガイドツアーには驚きました。ほとんどの人がはじめて触れる「マウス」の使い方を、Macの画面と連動したソフトウェアが解説してくれたのです。単純明快に説明することでMacを一気に「役に立つ道具」にしていました。それをカセットテープの音声と1枚の400KByteフロッピーディスクに入ったソフトウェアで二十年前に実際にやっていたのです。
マニュアルもカラー印刷で大変工夫されたものでした。別冊のマックペイントのマニュアルはわずか32ページですが画期的な機能を余さず説明していました。もちろん画面は完璧にカナ版にローカライズされていて、当時のアップルコンピュータジャパンスタッフの意気込みが感じられました。

512KMacのおかげで私はMacのプログラム開発に携わる事ができ今日があるわけです。しかし、このMacは私にとってとても高価で大きな投資でした。妻に半額出してもらったとは言えかなりの出費でその後、個人ではなかなか新製品を買う事ができずにいました。そんな中で日本でもアップグレードのサービスがありました。

初代Macは、当時のマイコンのようには、拡張できませんでしたがアップグレードの手段が用意されていたのです。512KからPlusの場合、後ろにSCSI端子が追加となるのでバックパネルも交換になりました。この頃には札幌にもMacを扱うお店ができていました。知り合いのMacショップでアップグレードしたので512Kのバックパネルは手元に残す事ができました。これは今でも大切なオブジェとして保管しております。有名な開発者のサインを拝む事もできます。もちろんアップグレードしたPlusも手元に残してあります。512Kのロジックボードは契約上引き渡さなければならないと説明されました。
この原稿を書くために改めて確認したところPlusのマニュアル類も付属していました。漢字Talkと内部ディスクドライブもそれぞれ独立したマニュアルがあります。このマニュアルもカラーで512Kマニュアルの良いところを継承したものでした。残念なのはOsakaフォントが大きく画面に不釣り合いで美しくなかったことです。日本語表示に関してはエーアンドエー社のJAMがすばらしかっただけにとても残念です。

アップグレードで、ロジックボードと内蔵フロッピードライブがPlusと同等に生まれ変わりました。キーボード・マウス・CRTと正面側筐体・電源はそのまま使います。シリアルポートの形状も変更になったためイメージライタを接続するための変換アダプタも付属していました。内蔵フロッピーが二倍の800Kになり、自宅での開発と互換性テストマシンとしてその後もしばらく活躍しました。

一つのマシンを長く使うにはソフトウェアの互換性が欠かせません。その点MacはOS・アプリケーションともに大変優秀です。512KMacがPlusになっても全く問題なく動きました。また、アップグレードしたPlusで開発したソフトウェアもまた、Mac IIやSEで問題なく動作しました。
特にMac IIで13インチモニタだけでなく、当時(80年代の終わり)のパソコンとしては大画面であった17インチでも問題なく動作した時、そしてファイルシステムがHFSになり「開く」と「保存」ダイアログがフォルダの階層にみごとに対応した時にはガイドラインに沿って作ったソフトウェアの威力を身をもって感じました。その後も、PowerPCへの移行やMac OS XのClassic環境で、アップルの互換性に対する徹底した姿勢と技術力の高さを肌で感じました。

私は『Macは才能の増幅器』であると常々思ってきました。直感的に使えるよう工夫されたFinderとシステム、そして魅力的なアプリケーションが使い手の才能を育てるのです。欠かせない道具であるMacを長く使い続ける事は利用者にとって重要です。
古いマシンでも最新のシステムで問題なく動作するので、安心して長く使う事ができます。さらに、Macをより長く使うことがでるアップグレードの手段があったことは、利用者に取ってはありがたいことでした。
新型が売れないとAppleさんとしては困るのでしょうが、基盤交換で最新機種になるアップグレードサービスはリサイクルの面からも検討してほしいものです。

有限会社快技庵
高橋政明
高橋政明 有限会社快技庵(かいぎあんhttp://www.kaigian.co.jp/)代表取締役。
MOSA理事、モサ伝(MOSAメールマガジン)編集長。
北斗、リーフ(株式会社エスデーエンジニアリング)、たまづさ、パワーキーパー、エージェントメーカー、ジャンボエディタ、ジャンボルーペ(株式会社コーシングラフィックシステムズ)などを開発してきた。2001年に会社を設立し独立した。現在も現役開発者である。

 

MOSA理事で、いつも読んでいる、モサ伝編集長の高橋さんにお願いしました。みなさんも、どこかで、高橋さんのプログラムのお世話になっていますよ。

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