Vol.93 キーワードは「静音」 岩田 勇

Macintosh 512K

「林檎いとしや」の原稿の作成のお話をいただきました。「こだわりのあるMac」についてとのことです。
何について書こうかと迷ったのですが、多くの皆さんにならって、最初に出会ったMacについて書くことにしました。ただ、私とMacの出会いは、これまでに「林檎いとしや」へ登場した方々とはかなり違うのではないかと、ちょっと心配に思っています。
私とMacとの出会いは、当然のことながらエルゴソフトに入社しなければ、あり得なかったことでした。当時のエルゴソフトは、日本初のMacintosh向け日本語ワープロソフト「EgWord」の開発に成功し、発売を開始したばかりの頃でした。
そんなエルゴソフトに、私は入社しました。驚かれるかもしれませんが、Macに惹かれての入社した訳ではありません。さらに当時の私は、エルゴソフトが「何かMacのソフトを作っている」といったことぐらいした知りませんでした。

そんな私ですから、当然最初に担当となったのは、Macと全く無関係のMS-DOSパソコン向けのEGBRIDGEの開発でした。その後にかな漢字変換エンジンのメイン・プログラマを担当することになるのですが、それでも全くMacを触らない日々を過ごしていました。
かな漢字変換エンジンは、Macでなくとも開発が可能でしたので、実際には開発でソースコードの管理を行うことを考慮して、UNIXマシンでおこなっていたのです。

そんな仕事の日々の中で、私はあることで大変ストレスを溜めていました。

それは「Macの開発に関われない」ということではなく、開発環境の「騒音」でした。

というのは、当時のUNIXマシンには、立派な排気ファンがついていましたし、ハードディスクは轟音をあげていつも回転していました。ですからUNIXマシンでの開発現場は、騒音の真っただ中にあり、プログラミングに集中するには最悪の環境だったのです。

そんな劣悪環境から抜け出そうと、思いついたのが、UNIXマシンへアクセスするためターミナルマシンを、離れた静かな場所に設置しようとするものでした。

ターミナルマシンとして、まず候補にあがったのはPC9801でした。しかし、当時PC9801の動作音は、お世辞にも静穏とは呼べないものでしたし、しかもターミナルマシン用に余っているマシンは無かったのです。

そんなときに目についたのが、会社の片隅に忘れ去られていた「512KMac」でした。

当時の社内のMac環境は、Mac Plusと漢字Talkがすでに主流になっていて、日本語OSが動かない「512K Mac」は使われずに、置き去られていたのでした。

早速、UNIXマシンから遠く離れた事務机までRS-232Cのケーブルを引いて、Macをターミナルマシンとしてセットアップして、静寂のプログラム環境を実現したのでした。

今思えば、随分贅沢なターミナルマシンでした。エルゴソフトのように、Macがあふれている環境でなければ、ウン十万もする「512K Mac」が余っているなんてことはあり得なかったことでしょう。

そんなわけで、私がMacを選んだ理由は、デザインでもなく、抜群の使い勝手でもなく、技術的な先進性でもなく、「静音」という不純?なキーワードだったのです。

仕事柄、自宅に持ち帰って、Macで作業をすることが多々ありますが、その度にMacの静寂性には助けられました。

(一部騒々しいものがありますが、そういった機種は範疇外です)

夜中家族が寝静まった後でも、なんら気にすることなく使えるのですから。
私には、「静音」もMacのひとつのキーワードのような気がしてなりません。
株式会社エルゴソフト
岩田 勇
岩田 勇
いわた いさむ
株式会社エルゴソフト
取締役マーケティング部長
1963年生まれ。
1986年エルゴソフトへ入社。
EGBRIDGE、かな漢字変換エンジンなどの開発担当、EGWORDの開発責任者を経て、2002年より同職。
現在のPowerBook G4 (15-inch FW 800)で、個人購入のMacとしては7台目。動作音がとても静かなので大変気に入っている。

 
今回は、株式会社エルゴソフトの岩田さんにお願いしました。 AUGM大阪ではお世話になりました。自信ももってマックの最新OSにおすすめということでした。

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