Vol.91 Performerのいた、あの頃 司馬 一

Performer5320
CPU:Power PC 603e/100MHz
RAM:16MB/Max64MB
HDD:1.2GB

1997年3月、我が家にMacがやってきた。といっても自分のではなく、この春から同じ一軒家に住むことになった劇団仲間の一人「タツヤ」のモノだった。学生の頃からワープロ専用機を使っていたからキーボードに抵抗はなかったものの、それ以外はすべてが???。それでもプリンタから打ち出される文字の美しさには強烈に魅かれ、少しづついじりだした。

タツヤに説明してもらっても、機能拡張だとかコントロールパネルだとかは相変わらず???状態。人の物を壊さないように、ただそれだけを考えていた。だから、その頃の僕はMacを起動して、クラリスワークスを立ち上げて脚本を書いて保存して、Macのシステムを落とす、その操作を繰り返すだけだった。

Macで脚本を書く作業はすこぶる快適だった。ワープロ専用機と比べ、画面の一覧性がダンチだったし、何よりもCDを聞きながら脚本を書く時、手元ですべて操作できるのが魅力だった。ただ、時々(よく?)フリーズしてせっかく書いたセリフがブッ飛んでしまうことも何度か経験した。何故かそういう時に限っていいセリフ書いてるんだよな~。同じセリフを書こうとしても、ノッて書いてる時とは温度が違うから、二度と再現できないし・・・。

けれど、CDを聞きながら脚本が書けて、キレイにプリント出来さえすればいい、それさえできればよかったから、それ以上のことは憶えようとしなかった。しょせんは人のモノって意識もあったし。当然、そんなヤツにMacは冷たく、時々言うことを聞かなくなったりした。しかも時間がない時に限って。

そんなある日、切羽詰まってやっと書き上げて、後はプリントするのみ、ほとんど終ったも同然!ヤッター、これで寝られる~!!と思っていた矢先、急にプリンタが動かなくなった。

「おい、何やってんだよオマエ、早くしろよ」

と言ってみてもウンともスンとも言わない。血気盛んだったあの頃、アタマきてプリンタをぶん殴った。給紙用のトレイが飛んでったけど、それでも印字を始めようとしない。

「テメェこのヤロー、いい加減にしろよ!!」

叫んでみても状況は変らない。ふとMacの画面を見ると白黒のホイールがク~ルクル、と回っていた。

「何だよ、オメーもかよ、フザケんな!」

思いっきりディスプレイをぶん殴った・・・痛かった。
騒ぎを聞きつけたタツヤが二階から降りてきた。

どうした?
「いや、プリントしてくんないんだよね」
何かした?
「いや・・・なんにもしてない・・・ハズ」

そう、Macはタツヤの持ち物で、僕は使わせてもらってる身だった。それなのにフリーズするとアッタマきて電源引っこ抜いたり、言うこと聞かないと横っ面ひっぱたいたり、ヒドイことばかりしていた。でもディスプレイを殴ることは二度としなかった。あの後、10日間ほど指が腫れてしまったから・・・。

劇団仲間との共同生活はイベントの連続だった。稽古が終るとみんなで家にきて、毎日が合コン状態。夜中ハシャギすぎて近所の人に通報され警察が来たこともあったし、女の子が大泣きするような修羅場が繰り広げられたこともあった。なんか『俺たちの旅』みたいだった。
そんな生活が2年ほど続いた頃、タツヤが結婚して家を出て行くことになった。自分のMacを買う必要に迫られ、慌ててMacのことを勉強し始めた。そこで初めて、家にあるタツヤのMacが「Performer5320」だと知った。その頃、巷ではiMacが話題になっていて「She’s A Rainbow」のテーマにのって5色のカラフルなiMacがクルクルとまわっていた・・・。

当初三人で住み始めたこの家も、何度か住人が入れ替わり、今は僕一人。当初は、ほとんどワープロ状態だったMacも、Mac OS Xのおかげでフリーズすることもなくなり、iTunesのおかげで格段に音楽環境は良くなった。Mac以外で音楽を聞かなくなるほどに。Macでやることは飛躍的に増え、いつのまにか写真の整理や映像編集を行うようになっていた。

Macと真面目につきあうようになってから生活が変わった。それまでの劇団、演劇という閉じた世界から一転、Macが僕を広大な世界に連れ出してくれた。見るものすべてが新鮮で、一気に人間関係が広がった。仕事の内容も少しづつ変化し、Macを使う仕事が増えていった。ただ、役者の仕事が減ってしまったのが残念だけど・・・。

この家に来てから7年。タツヤは二児の父となり、Performer5320は、一時劇団の事務所で使われた後、後輩の家に引き取られ今も稼働している。僕はといえば、一丁前にPower Mac G4(Dual 1.25)とiBook(G3 800)の2台を使うようになったけど、いまだに女のコがどーした、合コンがこーしたと騒いでいる。僕の生活をinnovationしてくれたMacも、こればかりは変えてくれないらしい・・・。
(司馬 一)
司馬 一
しば はじめ

1968年10月16日生まれの天秤座、AB型 静岡市出身 本業:俳優、副業:多数2003年3月からAUGMのレポーターとして各地におジャマしてます。全国のMacユーザと出会えて、旨い酒が飲めるのもMacの力なんだろうな~。自称、Macを持った渡り鳥(リスペクト、アキラ!)。

 

今回は、アップルユーザーグループミーティングをアップル側の窓口として支えてくれている、司馬さんです。公式レポートは司馬さんが書かれています。ユーザーグループミーティングを開催してると何かとお世話になる方です。でも、そんなかたのマック歴は意外に浅かったようです。

(MacTreeProject)

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