Vol.78 HyperCardの入った箱、それがMacintosh 大串敏史
ゲームがMacintoshを教えてくれた
僕が最初にMacintoshを意識したのは、「ウィザードリィ(※)」というゲームだった。
「ウィザードリィ」は、Apple][でオリジナルが作られたゲームだけど、僕が手に入れたFM-7版(※)は、ウインドウを重ねるという斬新な表現がなされていた。パソコン雑誌を読むと、Macintoshというパソコンが採用しているマルチウインドウシステムを取り入れている、とあった。こんなかっこいい表現を使ったパソコンがアメリカにはあるのかと、ドキドキした。そのパソコンを使ってみたいと思った。
次に記憶に残っているのも、またゲーム絡みだった。
どこかのパソコン雑誌で行われたゲームのシナリオ募集企画に、HyperCard(※)で作られた投稿作があった。その投稿作の評は、「シナリオというレベルではなく、既にゲームとして遊べる」といったようなものだったと思う。ここで、ワープロでもペイントソフトでもないソフトを作るソフト、といってもBASICのようなプログラム言語でもない、不思議なソフトが存在することを知った。いろいろHyperCardのことを調べて、これは僕がコンピュータに持っているイメージを具現化したソフトじゃないかと感じた。ますます、Macintoshを使ってみたいと思った。
その後X68000(※)で、初めてGUIのOSを使うことができた。X68000はMacintoshとはまた別に、非常に思い入れのあるパソコンだけど、結局HyperCardのようなソフトは出なかった。X68000を使っていても、Macintoshへの想いは増していった。
僕にとってMacintoshやHyperCardは、時々雑誌で見かける未来を感じさせる不思議な存在であったのだけど、ずっと実物にお目にかかることすらできないものでもあった。
ついにMacintoshとHyperCardに出会った
そして僕は大学生になって、大学の電算室にMacintoshを見つけた。小さくて、フロッピーディスクをぺろっと舌の様に出す、愛嬌のある筐体だった。
小さな画面にフロッピーディスクをくっつけて、HyperCardでその大きさに合わせてラベルを描いて印刷すると、ちゃんとラベルがフロッピーディスクにぴったり張れる大きさで印刷された。WYSIWYG(※)という機能だ。そのことに、今までのパソコンでは感じられなかった手触りを感じた。
MacPaint(※)でも同じことはできたのだけど、この時感じた衝撃がHyperCardに入れ込む原因の一つとなったのは間違いない。
やっと触れたMacintoshとHyperCardは、想像の中のものとはちょっと違っていたけど、長い間の憧れで肥大化していた期待を裏切るものではなかった。
Macintoshが普通のパソコンの値段になって、遂に自分のMacintoshとなったのはPerforma520だった。頭でっかちで、CDをキャディに入れる必要のある、ちょっと格好悪いマシンだったけど、HyperCardLiteが入っていた。そのマシンを好きになるにはそれで十分だった。
それからMacintosh、というよりHyperCardに夢中になったのは言うまでもない。
これからのMacintosh
現在HyperCardはMacOSXのClassic環境でも動くし、アップルのサイトからダウンロードすることもできる。でもMacOSXネイティブ環境で動くHyperCardは無い。といってHyperCardの代替ソフトがあるかと言えば、それも無い。
HyperCardを使いたくて買ったMacintosh。HyperCardが動かなくなったら、僕はそれをMacintoshと思えるだろうか?
※ウィザードリィ
1981年ロバート=ウッドヘッドとアンドリュー=グリーンバーグ製作のRPG。「ドラゴンクエスト」を初めとして、その後のRPGに大きな影響を与えた。ちなみにMac版の発売は1985年で、FM-7版は1986年(漢字Talk1.0が出た年)。
※FM-7
富士通製作1982年発売のパソコン。後に作られたFM-7の後継機であるFM-TOWNSは、和製Macintoshとでも言うようなパソコン。
※HyperCard
1988年に登場しMacintoshにバンドルされた、残された私たちのための開発環境。何でもできるソフト。ゲーム、絵本、動画、データベース…何でも。
製品データシート
http://www.apple.co.jp/datasheet/software/HyperCard22.html
http://www.apple.co.jp/datasheet/software/HyperCard23J.html
HyperCard本体
http://www.apple.co.jp/ftp-info/reference/hypercard2.2litej.html
http://www.apple.co.jp/ftp-info/reference/hypercardplayerj1-2.3.html
※X68000
シャープ製作1987年発売の「パーソナルワークステーション」。GUIとCUIの二つのOSを持ち、その名の通りCPUに68000を採用している。当時このCPUはMacintoshにも採用されていた。GUIはもちろんソフトウェアでの電源やFD排出制御など、Macintoshを意識して開発されたのは間違いない。
※WYSIWYG
WhatYouSeeIsWhatYouGet(見たものが手に入れられるもの)。つまり、画面表示とプリントアウトが同じ大きさになること。
※MacPaint
HyperCardの作者であるビル=アトキンソンが作り、初期のMacintoshにバンドルされていたペイントソフト。現在のペイントソフトで、MacPaintの影響を受けていないものは存在しないだろう。
(大串敏史)
今回は鳶嶋工房のとんびこと、大串さんにお願いしました。
MacPowerでの「ほ~むメイドAppleScript」ではお世話になりましたが、、残念ながら挫折中です。AppleScriptはXでより使えるようになっているらしいので、勉強し直したいですね。
(MacTreeProject)
大串敏史
とんび
大学で化学を専攻したのにChemDrawは使わずHyperCardにはまる。
MacPowerで「ほ~むメイドAppleScript」「れでぃメイドAppleScript」連載。
HyperCardユーザーグループ「ハイパーカード・パーク」副代表。
「鳶嶋工房」(個人サイト)
http://www.tonbi.jp/
「ハイパーカード・パーク」
http://www011.upp.so-net.ne.jp/PARK/

Leave a comment