Vol.65 一番長くたっぷりと使い込んだ1台 林 信行

Macintosh SE

CPU:68000/Speed:8MHz
Min.RAM:1MB/Max.RAM:4MB

数あるMacの中から、特に思い入れがある1台を選ぶのはなかなか難しいことだ。
筆者はなぜか高校時代、DynaMacの製品発表記者説明会に招待され、学生服で足を運んだ経験を持つ。これもなかなかの思い出だ。
PowerBook Duo 230や初代iMacも捨てがたい。
だが、ふと一番じっくり楽しんだマシンは、と考えてみると頭に浮かんだのはMacSEだった。
筆者が購入した初めてのMacであり、今の仕事今の仕事ーーMac関連記事の執筆ーーもこのMacで始めている。

中学時代(1980年頃)から、ずっと先進的なアップル社のパソコンが欲しかった。
しかし、当時、アップルのパソコンは日本で買うには高すぎた。筆者は予備校のあるお茶の水、高校から近い新宿のNSビル、そして家の近くの3軒のゼロワンショップに通いつめてMacをいじり倒していた(特に「Studio Session」という音楽ソフトには衝撃を覚えた)。

あこがれのMacがようやく手に入ったのは米国の大学に留学してからだ。Macは米国では日本ほど高価ではなかったし、学校のコンピューターショップで学割で買えば定価の6割ほどになったのだ。
留学後、数年はパソコン無しで過ごしたが、留学生活にもすっかり慣れた1988年、秋のBack To Schoolキャンペーンで安くなったMac SEを購入ーーこれが筆者最初のMacとなった。値段は確かMS WordやImage Writerがついて2500ドルだったと思う。
それまでに使ってきたパソコンがすべてカラー表示対応だったので、Mac IIを買おうかとも悩んだ。しかし、どこかに「Macはこの形でなきゃ」というこだわりがあった。またハードを安くしてもその分、ソフト購入にお金を回したいという考えもあった。

最初は、それまで使っていたパソコンとあまりに勝手が違うので躊躇する日々が続いた。だが、使えば使うほどにMacに引き込まれていった。
何よりHyperCardをはじめ当時のMac用ソフトはどれも革新的で面白かった。
今ではよく見かけるタイプのソフトがほとんどだが、当時にしてみれば初めてGUI対応となった○○用ソフト、という製品ばかりだ。
「Mac Recorder」(SoundEditは元々、この製品のおまけ)、「VideoWorks」(Directorの元になった)、「Dark Caslte」といったソフトで何度夜を徹したことだろう。
「Trust and Betrayal」、「Balance of Power」そして「Sim City」といったゲームソフトをとっても非常に革新的だった。
今でも楽しいソフトはたくさんあるが、当時ほど楽しめないのは、時代のせいか、それとも単に筆者の歳(や仕事)のせいなのか...

このようにハードよりもソフト重視だった筆者は2度あったアップグレードのチャンスも見逃してしまった。
Mac SE購入直後、FDHDという1.44MB(2DD)の大容量の内蔵フロッピードライブ(Super Drive)が登場、さらに高速な68030を搭載したMac SE/30も発表されたーーアップル社は、内蔵フロッピードライブやロジックボードの交換アップグレードサービスを提供していたが、筆者はアップグレードより、ソフト購入やパソコン通信にお金を注ぎ込むことにしたのだ。

もっとも、だからといって筆者のMac SEがオリジナル仕様のままかというとそうではない。実は筆者のMac SEは、米国で買ったものであるにも関わらず漢字ROMが搭載されているのだ。
きっと今なら時効なので書いてしまおう。
当時、筆者にとっての悩みはMac SEが米国仕様だったことだ。日本仕様のMac SEには漢字ROMが搭載されており、漢字TALK 1.xという日本語OSもついていた。
冬休みで日本に帰っていた時、アップル社に電話をかけ相談をすると、加藤さんという方が筆者のMac SEに漢字ROMと漢字TALKの利用に必用なメモリーを取りつけてくれるという。おまけにそれはクリスマスプレゼントだと言う。「Macのアメリカでのおもしろい話を聞かせてくれればそれでいい」と言ってくれた。
その後、加藤さんと話をすることはなかったが、筆者は翌90年の8月号からMACPOWER誌で執筆活動をはじめ、「MacAdemic Press」という連載で当時のアメリカのMac事情を書き始めた。
そしてかのMac SEは、同誌への記事執筆はもちろん、MACWORLD EXPO/SAN FRANCISCOや同BOSTONといった取材にもかつぎ出されることになった。

あのMac SEは今思い返すと一番長く、そしてたっぷりと使いこんだMacだったのかも知れない。

(林 信行)

nobiこと林信行さんです。マック系のライターとして、僕達を楽しませてくれています。今回、オペラシティの忘年会でご一緒させていただきました。そろそろiweekです。ぜひ大阪に取材に来て下さいね。

(MacTreeProject)

林 信行
nobi

MACPOWER、MacPeopleなどアスキー系媒体を中心にMac関連の記事を書くフリーランスライター。現在、両誌の他にMacTopiaやBoiled Eggs Onlineでも連載を執筆中(後者の連載はまもなく再開予定)。 2003年3月現在、ホームサーバーやWeblogにはまっている。
http://nobi.com/nobilog/

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