Vol.25 『Macがどんどん増えるワケ』Performaが泣いた日 石井めぐみ
Performa5220
初めて購入した自分のMacはPerforma5220だった。「All-in One!」「箱から出してすぐ使える!」こんな謳い文句で作られた、iMacの前身ともいえる初心者向けモデルである。30万円近い価格を考えると実際にはビギナーが手を出すのは難しかったかもしれないが、一体型のボディーの中にPowerPCと様々なアプリケーションを詰め込んだPerformaは、Macに嵌まりかけていた当時の私にとっては充分魅力的だった。
「Performaを使っています」などと言うと、ヘビーユーザーには鼻で笑われてしまうことが多かったが、何をやったら良いのかさえ分かっていない超ビギナーにとっては、現在のiMacよりも格段に親切だ。ワープロ、表計算、お絵書き、ビデオ編集から、電子辞書、英会話、ゲーム、テレサーチ・・・と20数種類のソフトを満載している上に、内蔵モデムとテレビチューナーまで付いているのだから、何をすべきか迷う余地もないほど充実したマシン、まさに魔法のオモチャ箱のようなものだった。
贅沢なオモチャ箱を手に入れた私は嬉しくてPerformaに夢中になった。高価な布地でカバーを作り、ボディーにはオシャレなペイントを施した。PhotoshopとIllustratorとDirectorとShadeとPainterを入れ、加工途中の画像を保存しまくり、散文や日記や詩を書き散らかし、興味のあるものは次から次へデータベースを作って詰め込んだ。雑誌やネットでダウンロードしたフリーソフトを使ってデスクトップを飾り立て、入れられる拡張カードは全て装着した。
可愛いMacはどんどん肥え太り、しだいに我儘になって言うことを聞かなくなった。フリーズ、爆弾、揚げ句の果てにほとんどのソフトが立ち上がらなくなった。「Macは人間と同じだから・・・」友人の言葉を信じて、私は必死で機嫌をとった。撫でる、拝む、供物を捧げる・・・。
しかし、ある朝ついにPerformaは起動しなくなった。真っ黒い画面。しばらくすると聞いたこともない悲しい音が聞こえてきた。そして画面の真ん中には泣いているようなMacの顔。「まさか・・・」頭の中が真っ白になった。こんなに可愛がったのに何が不満だったというのだ。毎朝毎晩顔を拝み、筐体を撫で回し、キーボードを触りまくっていたというのに・・・。
泣きながらPerformaを近くの Mac屋(知る人ゾ知る!)に連れていった。「こりゃぁ詰め込みすぎですね~。よくこれで動いてたなぁ~」どうやら私のPerformaは感心されるくらい頑張っていたらしい。ド素人の、それでもネコッ可愛がりしてくれる主人の期待に応えようと必死で動いていたのだ。
「ゴメンネ、もう無理はさせないよ」私はPerformのハードディスクを整理して、動きやすい環境を作り上げた。入りきらなくなったデータは、Performaを楽にしてあげるために買い足したPowerMac7300に移し替えた。
私のPerforma5220は復活した。そして今度は7300を守るためにPowerBookを買った。そうやってMacは増えていく。気が付くと十数台のMacが我が家を占領しつつあった。しかたなく、Macのために家を買った。
Performa5220との出会いが私の人生と運命を変えた。これで良かったのか悪かったのか・・・今は考えないでおこう。とりあえず、次の目標はDual800か・・・。
(石井めぐみ)
石井めぐみさん
テレビでみる、石井さんと実際にマックな場所で会う、石井さん、どっちも本人だとは思うのですが、きさくな女優さんです。
マックな情報知識は、すごく豊富で、ぼくなんか足元に及ばない、、、
しかも、つぎつぎとマックを買い換える理由が、ほとんどこじつけ、はまっていますね。。。
(MacTreeProject)
石井めぐみ
MUGUMI ISHII
石井めぐみ
女優・エッセイスト
1958年東京都生まれ 早稲田大学国文科卒
女性では初めてMacエバンジェリストとしてMacFanより認定される。
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