Vol.15 曲がった直線 山本康仁

Apple Lisa
CPU: 68000 5MHz
Memory:512K/最大2Mbyte
Disk:5.25inch FD/400Kbyte ×2

17年前、アップルフェスタ会場の、一段高くなった台の上にその機械はあった。
LISAはグラフィカルユーザーインターフェースを装備し、マルチウインドウを具現化した画期的な製品だった。
スポットライトがあたったベージュ色の機械を見たとき、驚きと焦りを感じた。

当時、コンピュータは黒い画面に白い文字を表示し、その後ろにグラフィックを重ねるものが主流だった。
単漢字変換から文節変換がやっと実用になってきたころだ。
テレタイプを源流にするCRTは漢字表示を高速に行えることを美徳とし、キャラクタジェネレーターによるハードウェア描画が一般的だった。
ビットマップディスプレイに自由に文字を表示するという発想は、高級品というイメージはあるが、その遅さにビジネスユーザーからは嫌われた。
しかし薄暗い会場に光る、Lisaの青白い画面には、見慣れぬアイコン、書類を重ねておいたようなオーバーラップウインドウ、マウスで自由に絵が描けるインターフェースがあった。
時代の変革を意識した。

高額だったLISAは手入れることはできなかったが、それをまねることはできるはずと思った。
日本で初めてマウスが標準装備されたPC100を購入し、マウス操作のアイコンデザイナーを作成した。
ルーペ片手にLisaの文字、アイコンのドットを拾い、再現することから始めた。
画面いっぱいに、ウインドウが広がるデモンストレーションから、実際にマウスで操作できるようになるまでは、それほど時間がかからなかった。
OSの半分を占めるIO.SYSの大半を、数万行のアセンブラで書き直した結果、MS-DOS機であったにもかかわらず、起動画面は白くなった。

Lisaの模倣から始めたGUIプログラムはLIKA、Linkage Independent Kernel Applicationと名付けた。
冗談のような名前とは裏腹に、オーバーラップウインドウの実現、下の状態がすぐにわかるトランスルーセントウインドウの搭載、これを目標のウインドウに重ね上からマウスでこすることでペーストができる「インレタ」ペーストの実装。
漢字表示とカラーグラフィックス表示が可能なGUIが完成した。
Macintoshがカラー化される前、Windows2.xの発表前だった。
NECの社員が自社のパソコンで動作する見慣れないGUIに驚き、私を本社に招待してくれた。
愉快だった。

PC100はPC98との政治的駆け引きに破れ、後継機がでないまま消えていき、LISAが、その価格と、あまりの先進性から商業的には成功せず、Macintoshに道を譲ったのは、結果である。

その後NeXT Computerに出会い、ハードディスクの中に広がる文化を感じ、ネットワークの醍醐味を味わった。
そしてMac OS Xに期待して、この薄いPowerBook G4を手にしている。
その紆余曲折もLisasから始まった一本のまっすぐな道にすぎないのかもしれない。
その先になにがあるのか、もう少しつきあっていくつもりである。

(山本康仁)

 

山本氏が公開している、Medical MacintoshはPOWERBOOK徹底解剖といった趣を持つ、非常に読み応えのあるページです。先日、mactreeの上野のオフラインに参加いただいて、初めてお会いしました。そのときに、Filemakerで作られた、すばらしいグループウエアを見せていただき僕は、ほとんど感動もの、それからは山本氏のページは僕の要チェックぺージに なりました。もし、まだ行ったことないならば要チェックですよ。

(MacTreeProject)

山本康仁
Yasuhito Yamamoto

都内の某病院で小児科勤務に従事。専門はアレルギー疾患治療。勤務と当直の合間に時間を見つけて更新している「山本康仁のホームページ」では、少し違った切り口からPowerBookを「解剖」しています。
山本康仁のホームページ(Medical Macintosh)

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