Vol.7 5220がMacワールドへの夢の入口だった 高橋 敏昭
メモリ:16MB/最大64MB(SIMM ハードディスク:500MB(IDE方式) CD-ROMドライブ:4倍速(トレイ式) ディスプレー:15インチマルチスキャン テレビ/FMラジオチューナ ビデオ入力 |
ぜんぜん乗り気ではなかった。もう何度もその印刷屋さんにはアプローチを受けていて、こんどはインターネットを使った販促について提案したいと言う。インターネットなんてよくわからないけど、とにかくその熱心さにほだされて私はプレゼンテーションを受ける時間を取ることにした。
机の真ん中になにやら黒いノート型パソコンが置かれた。これで説明するらしい。パワーキーを押すとジャーンという起動音が応接間に響く。「えっ、音がでるの?」画面の真ん中にはWelcome to Macintoshと表示され、やがてアイコンパレードが始まる。当時東芝ルポで書類を作り、モノクロのコンピュータしか見たことのなかった私の目は、カラーでおしゃれな起動画面に釘付けになった。「バーが伸びている。面白い!わっはっは」 それは後で聞けばPowerBook540だったそうだ。失礼ながらそれからの相手のお話は覚えていない。私はコンピュータらしからぬ六色林檎のマーク。ウィンドウを開閉させるときのシュッシュッというアニメーション。いらないファイルを捨てるとプッと膨らむチャーミングなゴミ箱。これらにもう夢中になり始め、他のことは耳から入らない状態になっていた。「これだっ!こんな可愛いコンピュータがあったんだ!欲しい、スグ欲しいっ」と、終わったとき既に私のアタマはそればかりになっていたのだ。 その日の会社の帰りに、私はさっそくMacの雑誌をあるだけ6~7冊も購入してみた。しかし、ぜんぜん書いてある言葉が理解できない。唯一読めたのは「Mac People創刊号」。私は一字一句舐めるように何度も読み返した。おかげでWindowsとの違い、最新の機種などがおぼろげながら掴めてきた。そしてどうやら私が最初に買うのは、いろいろソフトも機能もビギナー向けに揃っている、パフォーマ5220以外にないとの結論を解らないなりに出した。 それっ、いそげ!次の日曜日にパフォーマ5220はウチに来た。本体が33万、メモリ3万、プリンタ7万を税別でローンを組んだら一気に50万円ほどの出費になった。もう後戻りはできない。しかしながらその時点で私はダブルクリックというのをまだ知らなかった。それでもパフォーマをラックにセットし、8MBのメモリを自力で増設、付属の外付けモデムも繋げて、当てずっぽうながらパワーキーでちゃんとMacを起動させた。さらに「宛名職人Ver.1」「キッドピクス1.2J」をインストールして、メニューバーから終了もさせた。どぉ、えらい?いや私じゃない。偉大なるMacOS、わかりやすいMacintosh。これを買って間違いはなかったと私は確信した。奇しくもその日はWindows95の発売日でもあった。1995年11月23日のこと。いま思えば、私にとって分岐点の日となった。 パフォーマ5220はアットイーズというランチャーがファインダーの上にあり、ダブルクリックができなくてもアイコンボタンのクリックでアプリケーションは起動する。すぐに邪魔になったけど、当時の私にとってはMacワールドへの夢の入口になってくれた。私は5220のある生活に夢中になった。時間が足りなくて足りなくてどうしょうもなくなった。トラブルも相次ぎ、システムの再インストール、ハードディスクの初期化とたくさん苦しい経験もしたけど、それも楽しかった。やがて8500、G3とMacの購入を重ねてきた。しかし5220はMacOS8を積んでいまでも母の部屋で、多少ゆっくりながら元気に稼動している。iMacでも同じような道をたどれたかどうか、私にはわからない。 (高橋 敏昭) |
tktr高橋さんとの出会いはほんと、偶然だった。。。そのころ私のページではまだリンク集が健在で、その情報収集のために、ネットサーフィンすることが日課でした。あるページにきたときに。ほんとに、本音で書かれているとおもうページに出くわした。それが今の高橋さんのページ。きらりと輝くエッセイのセンスと、自らの失敗談をネタに初心者向けに書かれたページは、ほんと、初心者には一度読んでもらいたいと、思わせるだけの説得力があった。その後、高橋さんは精力的に活躍され、とうとう、その初心者に対しての説得力ある書き方で、一冊の本が誕生した。それが今日11月1日から本屋に並ぶとう、「tktrのMacでいこう!」新しいタイプのハウツウ本といってイイと思います。また明日も、高橋さんの更新を楽しみにする、一人のファンからも出版をお祝いさせてください。
(MacTreeProject) |
高橋 敏昭 Toshiaki Takahashi 1950年横浜で生まれ育ち現在新潟在住。Webページ「tktrのMac Beginner’s Diary」は96年10月から始めて4年になる。その中での「Welcome to Macintoshをもう一度」運動は97年5月からMacOS 8で「謹賀新年」が復活するまで。初めての著書「tktrのMacでいこう!」技術評論社は10月25日に発売。現在の主力機はPowerBook G3(1999)/400tktrのMac Beginner’s Diary |
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